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倍音で作られる音楽

  • clesre
  • 2021年4月3日
  • 読了時間: 3分

ピアノでCの音を鳴らした時、1オクターブ上のC、その上のGやさらに上のEなども同時に鳴っている。

これらは全て基音の整数倍の周波数を持ち、ふつうは高次の倍音ほど弱くなっていく。

楽器の音を聞くとき、よく意識すれば目立った倍音がいくつか聞こえるが、倍音をすべて認識することはほぼ不可能だ。


倍音が何オクターブ上にあるのか、というのは対数の計算で求めることができる。

周波数が2倍になると1オクターブ上がるので、

基音とn倍音の音程はlog₂ nオクターブとなる。

これに12を掛ければ12平均律での半音数になり、1200を掛ければ¢になる。

(mを掛ければm平均律でのステップ数になる)


基音からそれぞれの倍音までの半音数をまとめると

2倍音:12半音(1オクターブ)

3倍音:約19.02半音

4倍音:24半音(2オクターブ)

5倍音:約27.86半音

6倍音:約31.02半音

7倍音:約33.69半音

8倍音:36半音(3オクターブ)


…となり、2の整数乗の倍音しかオクターブ数が有理数にならない。

つまり平均律ではどれほど分割を細かくしても完全に一致させることができない(m平均律のrステップはr/mオクターブとなるが、無理数は分数で表せないため)。

例えば記事冒頭で書いた「さらに上のE」というのも、厳密に言うとCの28半音上ではなく約27.86半音上となる。

■不協和度、純正律と平均律


たとえば、12平均律のCとEを同時に鳴らした時、この協和度はどれくらいになるだろうか。

Cの音高を基準(0¢)にして、ひとまず5倍音までの¢値を算出すると


C(0¢)、Cの2倍音(1200¢)、3倍音(1902¢)、4倍音(2400¢)、5倍音(2786¢)…

E(400¢)、Eの2倍音(1600¢)、3倍音(2302¢)、4倍音(2800¢)、5倍音(3186¢)…


となる。ここでCの5倍音(2786¢)とEの4倍音(2800¢)に注目すると、14¢という非常に狭い音程でぶつかり合っている。

このせいでCとEの和音にはうなりが生じ、少し濁って聞こえる。


このように主な周波数成分に対し、うなりが生じるかどうかを調べると、理論上の和音の「協和度」を求めることができる。


先ほどのCとEの和音のうなりを消すためには、Eを14¢下げればいい。するとCとEの周波数比は正確に4:5、音程は386¢(純正長3度)になる。

こうして特定の主音(ここではC)に協和するように、すべての音の高さを平均律からずらして作られた音律を純正律という。


(歴史的に見ると、むしろ逆向きに「純正律よりも自由に転調できるように、協和度を犠牲にして音の間隔を均一にしたものが平均律だ」といったほうがよい。音律の移り変わりについては、また別の記事で書きたい)

■12音以外の平均律の可能性


分割数を変えると、12平均律に出せないさまざまな響きを生み出せる。


12平均律では5倍音を扱う時に14¢のずれが出るが、19平均律では7¢のずれで済む。さらに分割数を増やして53平均律にすれば、3倍音も5倍音もきわめて正確に出せる。


また、12平均律では5倍音までしか視野に入れていないが、それ以上の倍音を扱える平均律もある。例えば5平均律や36平均律では7倍音を、24平均律では11倍音を扱える。


これらの平均律についても、理解をさらに深めてから別の記事で書きたい。

■倍音を単体で鳴らす


撥弦楽器では弦の特定の位置を押さえて弾くこと(ハーモニクス奏法)で、管楽器では管の中の気流の速さを調節することで、本来の振動数の整数倍の音程を出せる。


先日入手した蛇腹ホースでも、振り回す速さによって気流の速さを調節してある程度は思った通りの倍音を鳴らせた。腕力の関係で10倍音より上が鳴らせなかった。


また、シンセサイザーを用いた音楽でも、フィルターで一定の周波数成分のみを強調したりできるため倍音がはっきりと聞き取れる箇所がまれに見つかる。

例として、System 7の『Hangar 84』を挙げる。

1:00から1:08にかけて、Fの7倍音~18倍音辺りまで上昇し、3倍音までゆっくりと下がっている。注意深く聴けば、7倍音と11倍音がかなり12平均律の音程からずれているのがわかる。

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