dimは不協和音なのか?
- clesre
- 2021年3月6日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年4月5日
dim(ディミニッシュコード)は根音・短3度・減5度からなるコードだ。
減5度は不協和音程なので、一般的な分類(不協和音程を1つ以上含めば不協和音)によるとdimは不協和音となる。
しかも減5度は昔から「悪魔の音程」と呼ばれたり教会音楽での使用を禁止されたりしているから、不協和音程の中でも一番濁った音程だと言ってもよいだろう。
本当にそうか?
気になったので、augの時にも出てきた純正音程表↓を使って調べる。

上にある横軸が周波数比の分子、右にある縦軸が周波数比の分母だ。例えば周波数3/1倍の音程はどのくらいの高さなのかを調べたいときは3/1の箇所を見る。スペースの都合上「1:702.0」とあり「1オクターブと702.0¢上」であることがわかる。
¢(セント)は12平均律の半音を100等分した単位だ。オクターブを1200等分ともいえる。
「純正な(理想的な)短3度の音程」は周波数比5:6だから「短3度上の音」は周波数6/5倍だ。
上の表では、分母も分子も素因数2を省略されているから、3/5の所を見る。-1オクターブと316¢。最後に、3/5→6/5では周波数を2倍する、すなわち1オクターブ上げるとよいから、純正な短3度(6/5)は316¢、つまり3.16半音。
12平均律では短3度(例えばドとミ♭)は300¢(3半音)で、純正よりだいぶ狭い。
dimは短3度を2つ積み重ねた和音といえる。よって、純正なdimコードの周波数比は
1:6/5:36/25 = 25:30:36 といえる。
前々回で書いた「純正なaug」は16:20:25だったので、それよりもさらに複雑な響きだ。
しかも12平均律ではずれが生じる。
純正なdim = 0¢、316¢、631¢
12平均律のdim= 0¢、300¢、600¢ つまり 25:30(-16¢):36(-31¢)
12平均律のaugは 16:20(+14¢):25(+28¢) だったが、
それよりも純正音程での周波数比が複雑で、そこからのずれも大きい、となると
あまり協和音だとはいえなそうだ。
ここで他の解釈を探そう。減5度(あるいは増4度)を、他の純正音程で解釈できないか?
表によると600¢付近の純正音程は
7/5(583¢)、10/7(617¢)、17/12(603¢)が見つかる。これ以外は単純な整数比にならないため却下する。
このうち7/5(583¢)に注目しよう。
これを用いると、純正なdimを25:30:36ではなく1:6/5:7/5 つまり5:6:7という、
極めて単純な比で表せる。
12平均律のdimは、5:6(+16¢):7(-17¢)となる。
これは言い方を変えると、何かの基音から見た5倍音、6倍音、7倍音の集まりと言える。
ドを基準として音名で表すなら、5倍音はミ(平均律から-14¢)、6倍音はソ(+2¢)、7倍音はシ♭(-31¢)となる。これはコードではEdimとなる。
12平均律は「5limit」(近似できる純正音程の素因数が5まで)と言われ、7倍音そのものは出せない(ドの7倍音をシ♭としても、31¢つまり1/3半音ほどずれていては倍音とは認識できないため)。
しかし、5倍音がもともと-14¢下にずれてある程度7倍音の誤差を相殺するため、周波数比7/5に限って言えば、17¢という比較的少ない誤差で近似できる。
7/5の音程は、septimal tritone、7limit(7限界)の三全音などと呼ばれる。
ちなみに、5:6:7の和音に4の音を加えて4:5:6:7にしたもの(あるいは4:5:6のメジャーに7の音を加えたもの)は「自然七の和音」と呼ばれ、12平均律では近似ができないが音律によっては再現できる。12平均律に慣れた私たちには、C7などの属七の和音の7thがかなり下がったものとして聞こえる。
結論としては、
① dimを短3度の積み重ねと解釈すれば、12平均律のdimはかなり不協和だ。
② 7倍音までを計算に入れる(7limit)場合、ギリギリ協和音と言えなくもない。でも慣習的に、12平均律は5limitであるからこの解釈はそもそも難しい。
というわけで、強いてどちらかに分けなければならない場合、
私なら不協和音に分類したい。
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